ご担当者の紹介
株式会社テレビマンユニオン
プロデューサー 三毛 かりん様
株式会社テレビマンユニオンは、創立から50年以上の歴史を持つ映像制作会社です。テレビ番組制作を中心に、映画制作・配給、さらには音楽コンサートや演劇の企画、マネジメントまでエンターテイメントに幅広く携わっています。クリエイターが集まり、「やりたい企画」を実現するために集まる“ユニオン”型の組織です。
今回『A2 Production』を活用したのは、ドキュメンタリー映画『カルテットという名の青春』の制作プロジェクトです。本作は、15年前に放送されたテレビ番組をもとに、当時の出演者である世界で活躍する4人の音楽家が再集結し「再会コンサート」をすることをきっかけに映画化をしよう、となった企画作品です。かつて15年前に、4年の歳月をかけて密着した映像を使い、テレビ番組としての構造を受け継ぎつつ、映画館での上映を前提とした作品を作ることを目指しました。“カルテット”という弦楽器の音楽を取り上げた作品ということで、特に音楽作品として「音の表現」が重要なテーマとなりました。
映画化に向けて、テレビ番組ではなく映画作品として再編集を始めましたが、大きな課題に直面しました。自宅のような生活音がある環境で視聴することが前提の番組映像を、音響が整った映画館で大きなスクリーンとスピーカーで視聴する映画作品に仕上げる必要があったからです。演奏を始めるときに息を合わせる呼吸の音や、ヴァイオリンを弾く演奏者の衣擦れの音など、その場の空気感も表現したいと考えていました。しかし、編集を進めると、通常であれば分かれて保管されているはずの音声パラデータが残っておらず、当時の音声データがミックス済み音源のみしか残っていないことがわかりました。これでは、映画作品にするために、ナレーションのトーンの変更や、楽器の演奏部分を強調させたり、密着映像の環境音などを調整したりするのが、かなり困難です。技術的な制約によって「やりたい編集はあるが、音が分けられない」という状況に直面していました。
編集方法について悩んでいた時に、社内情報をきっかけに『A2 Production』を見つけました。Webサイトで紹介されていた「どうぶつ奇想天外!」の事例ページを見て「やりたいことがまさに実現されている!」と具体的な活用イメージが湧き、「これならいけるかも」と試してみることにしました。実際に『A2 Production』を使って音源分離をし、分離された音を確認した際には、「想像以上にきれいに分離されている」と驚きました。当時収録された音の質感を損なうことなく、楽器の演奏、ナレーション、現場の環境音がそれぞれのトラックに分かれており、強調したい音の調整や、ナレーションを間引くなど、狙い通りの再編集、整音が可能だと判断をしました。
100分を超える元の映像でしたが、クラウドにアップロードし、分離された音源を入手できるまではわずか数時間で、即日に編集作業に移ることができたことにも驚きました。
さらには、本編だけでなく映画のティーザー制作においても『A2 Production』を活用しました。過去のテレビ用予告編からタイトルコールや印象的なキャッチコピーの音声だけを抜き出して再利用することで、新たなナレーション収録を行うことなく、本編・予告編の双方で過去映像を活かすことができました。
15年前のテレビ用予告素材からナレーションを抜き出して、映画用予告編に再利用。
予告映像で流れている楽器音やナレーション部分は、『A2 Production』で音源分離を行い、楽器音、ナレーションを整え直したうえで再編集したパートです。映画館で聴いたときに、より臨場感のある演奏になるよう仕上がっています。
今回の活用を通じて、テレビマンユニオンが強く実感したのは「過去の映像資産を、今の技術で新しい価値に変えられる」という可能性です。眠っている素材を、もう一度作品として世に届けたい。そういう企画が、もっとできるのではないかと思いました。
撮影現場で音が被ってしまった素材や、再収録ができないナレーションなど、制作現場にはこれまで“仕方がない”と諦めてきた場面が数多くあります。『A2 Production』は、そうした制約を取り除き、クリエイターが本来集中すべき表現や演出に時間を使える環境を整えてくれます。また、マルチカメラ映像の段積みの作業や、文字起こし・要約作業といった映像編集の“作業”の部分を効率化できそうなので、そういった機能の利用も考えています。作品としての映像づくりにおいて、AIにすべてを任せるということではなく、ディレクターやプロデューサーのクリエイティブを支える技術として『A2 Production』は活用できると思いました。
関連リンク
ドキュメンタリー映画『カルテットという名の青春』